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最高裁判所第一小法廷 昭和57年(オ)1394号 判決

上告人

福家敏夫

旧商号丸福総行株式会社

上告人

株式会社丸福総行

右代表者

福家敏夫

右両名訴訟代理人

馬見州一

高嶋智

藤本明

被上告人

中村信夫

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人馬見州一、同高嶋智、同藤本明の上告理由一及び二について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。

同三について

記録にあらわれた本件訴訟の経過とその内容に鑑みれば、原審が所論の手形金債務不存在確認請求について、事件を第一審裁判所に差し戻すことなく、自ら直接その当否について判断したことに所論の違法があるとするにはあたらない。所論引用の判例は、事案を異にし、本件に適切でない。論旨は、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(谷口正孝 団藤重光 藤﨑萬里 中村治朗 和田誠一)

上告代理人馬見州一、同高嶋智、同藤本明の上告理由

一 民事訴訟法三九五条一項六号の事由〈省略〉

二 原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違背がある。〈省略〉

三 原判決には、更に判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違背がある。

民事訴訟法三八八条違背

1 原判決は、「控訴人福家の被控訴人に対する本件手形の手形金元本債務不存在の確認を求める請求を、昭和五二年(手ワ)第二三号(原判決では「昭和二五年」とあるが「昭和五二年」の誤りである)が係属しているから、訴えの利益を欠くものであるという理由で全部棄却したことは、……先に係属していた控訴人福家の昭和五二年(ワ)第六六号事件の訴が後に被控訴人によつて昭和五二年(手ワ)第二三号事件が提起されたことによつて訴の利益を欠くことはない」「主文の用語は請求を棄却する」というものであるが訴の利益を欠くことを理由とするもので……実質的には訴を却下したものと解するのが相当であるので全部失当である」と判示しながら、「手形金債務の存否につき原審において実質的審理がなされた」ことを理由に「訴を原審に差戻さなくても実質上当事者に審級の利益を失わせない」として民事訴訟法三八八条による差戻をせず自判したことは、必要的差戻を定めた民事訴訟法三八八条に違背するのみならずこの種の先例である昭和三七年一二月二五日最高裁判所判決(民集一六巻一二号二四六五頁)と相反する判断をなしている。

実質的審理はなされても、昭和五二年(ワ)第六六号事件の手形金元本債務不存在確認請求の当否について一審の終局的判断が示されていないもので、原判決の処置は違法たるを免れない。

以上いずれの点よりも原判決は違法であり、破棄されるべきである。

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